はじめに
成長期の子どもが膝の痛みを訴えたとき、真っ先に疑われるのが「オスグッド病」です。特にスポーツに打ち込んでいる中学生に多く、膝のお皿の下がボコッと腫れて痛むのが特徴です。この記事では、オスグッド病の原因から予防法、治療法、日常生活での注意点までを、医療・健康の観点からわかりやすく解説します。
オスグッド病とは?
◆ 正式名称は「オスグッド・シュラッター病」
オスグッド病は、医学的には「オスグッド・シュラッター病(Osgood-Schlatter disease)」と呼ばれます。1903年にスイスの整形外科医オスグッドと、ドイツのシュラッターによって初めて報告されたため、彼らの名前が病名になりました。
◆ 発症年齢と性別
オスグッド病は、小学校高学年から中学生の男子に多く見られます。特に成長期(おおむね10〜15歳)で、サッカー・バスケットボール・バレーボール・野球など、ジャンプやダッシュを繰り返すスポーツをしている子どもに多く発症します。
◆ 好発部位
痛みが出るのは、膝蓋骨(膝のお皿)のすぐ下、脛骨粗面(けいこつそめん)という場所です。この部位が突出して、押すと強く痛むのが特徴です。

なぜオスグッド病が起きるのか? ― 原因とメカニズム
◆ 成長期特有の構造がカギ
成長期の骨はまだ完全に硬くなっておらず、軟骨が多く含まれています。特に脛骨粗面は、**大腿四頭筋の強い牽引力(引っ張る力)**がかかる場所であり、軟骨の状態だとその力に耐えきれなくなってしまいます。
そのため、大腿四頭筋の作用である膝を伸ばす運動(シュートやパス)を過度に行う、サッカー少年は特になりやすいと言われています。

◆ 筋肉と骨の引っ張り合い
運動をすると、大腿四頭筋が収縮し、膝を伸ばす動作が行われます。そのときに膝蓋腱を介して脛骨粗面が強く引っ張られるのですが、これが繰り返されることで脛骨粗面に負担がかかり、炎症が起きたり骨が剥がれたりして痛みが生じます。
◆ 環境・生活習慣の影響
・練習量が多く、休息が足りない
・ストレッチ不足で筋肉が硬くなっている
・成長スパート(急激に身長が伸びる時期)
このような条件が重なることで、発症リスクが高まります。
オスグッド病の症状
オスグッド病の主な症状は以下の通りです。
◆ 膝下の痛みと腫れ
- 膝蓋骨(膝のお皿)の下あたりに局所的な痛みと腫れが現れます。
- その部分が**出っ張ってくる(骨が盛り上がる)**こともあります。
◆ 運動時の痛み
- 特にジャンプ・ダッシュ・しゃがむ・正座といった動作で痛みが出ます。
- 安静時には痛みがないことも多く、「練習中だけ痛む」という訴えが典型的です。
◆ 進行すると…
- 無理を続けると骨の一部が剥離して、より強い痛みが続くこともあります。
- 成長が終わったあとも、膝下が出っ張ったまま残ることがあります(外見上の問題のみで、痛みは残らないことが多い)。
診断方法
◆ 問診と触診が基本
- どんな運動をしているか
- 痛みが出るタイミング
- 膝下を押すと痛むか
これらの情報からある程度は診断がつきます。
◆ レントゲンで確認
骨の剥離や骨端核の状態を確認するために、**X線検査(レントゲン)**が行われることもあります。特に痛みが長引いている場合や、腫れが強い場合に有効です。
治療法・対処法
オスグッド病は基本的に**保存療法(手術をしない治療)**で改善します。
◆ 安静・運動制限
痛みの強い時期は、まず安静第一です。練習の量を減らす、もしくは一時的に中止する必要があります。
◆ アイシング
運動後や痛みが強いときは、膝下を10〜15分冷やすことで炎症を抑えることができます。
◆ ストレッチ・リハビリ
大腿四頭筋(太ももの前側)のストレッチが重要です。これにより膝蓋腱の引っ張る力を和らげ、痛みを軽減します。

例:大腿四頭筋のストレッチ方法
- 床に座る
- 片脚の足首をつかみ、膝を曲げて太ももを伸ばす
- 10秒×3セット、左右交互に行う
◆ サポーター・テーピング
膝下の引っ張る力を軽減するための**オスグッドバンド(専用サポーター)**やテーピングも有効です。
◆ 投薬(必要に応じて)
痛みが強い場合は、医師の判断で**消炎鎮痛剤(湿布や内服薬)**が処方されることもあります。
予後と治癒期間
◆ 成長とともに自然に治る
オスグッド病は成長が落ち着くと自然に治るケースが大半です。個人差はありますが、数か月〜1年程度で症状は改善します。
◆ 後遺症はある?
多くは痛みがなくなりますが、膝下の出っ張りが残ることがあります。これは見た目の問題であり、機能にはほとんど支障ありません。
日常生活での注意点と予防法
◆ ストレッチ習慣をつける
運動前後の大腿四頭筋・ハムストリング・ふくらはぎのストレッチは必須です。特に成長期は筋肉の柔軟性を保つことで、負担を軽減できます。
◆ 休息を大切に
「痛みは我慢するもの」ではありません。少しでも痛みを感じたら無理せず休むことが、長期的にみると大切です。
◆ フォームの見直し
ジャンプやダッシュ、着地動作のフォームが乱れていると膝への負担が大きくなります。指導者と相談しながら改善することも予防につながります。
まとめ
ポイント | 内容 |
---|---|
好発年齢 | 10〜15歳の男子に多い |
症状 | 膝下の痛み・腫れ・出っ張り |
原因 | 大腿四頭筋の牽引による脛骨粗面の炎症 |
治療法 | 安静・ストレッチ・アイシング・サポーター |
予防法 | 柔軟性の維持と適切な休養 |
おわりに
オスグッド病は「スポーツを頑張っている子ども」にとって、通過儀礼のような疾患かもしれません。しかし、正しい知識と対応をすれば長引かずに改善できる疾患でもあります。膝の痛みに気づいたときは無理せず、適切な対応をとることが将来のパフォーマンスにつながります。
成長期の膝の痛みに悩んでいるご家庭や指導者の方に、この記事が少しでも参考になれば幸いです。
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