転倒して肩を強打したあとに激しい痛みと腫れ…もしかして「上腕骨近位端骨折」かも?
中高年を中心に発症が多いこの骨折は、日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、リハビリの難しさから「長引く痛み」と「可動域制限」に悩まされるケースもあります。
この記事では、
✅ 上腕骨近位端骨折の原因と症状
✅ 診断と治療の流れ
✅ 手術と保存療法の違い
✅ リハビリで気をつけたいポイント
✅ 高齢者に多い理由と予防方法
について書いていきます、
高齢者の四代骨折
上腕骨近位端骨折とは?

上腕骨とは、肩から肘にかけて伸びる太い骨で、腕の中で最も長い骨です。 その「上端」=「近位端」とは、肩に近い部分のことを指します。
「上腕骨近位端骨折」とは、この肩のすぐ下の部分で起こる骨折で、肩関節の構造や動きにも大きな影響を及ぼします。特に骨粗しょう症を持つ高齢者に多くみられる外傷です。
骨折が起きる主な部位
- 解剖頸(かいぼうけい)
- 外科頸(げかけい)
- 大結節(だいけっせつ)
- 小結節(しょうけっせつ)

これらの部位のうち、外科頸の骨折が最も一般的です。
上腕骨近位端骨折の原因
転倒による外力

最も多いのは、転倒して肩を強く打ちつけた時です。 高齢になってくると、転ぶことも多くなります。また、転んだ際にとっさに手が出ることなくそのまま肩から地面にぶつけてしまうことが多くあります。そのため、若者ではあまり見られず、高齢者に多く見られています。
スポーツや交通事故
若年層ではよっぽどありませんが、ラグビー・サッカー・自転車事故などによる強い衝撃が原因になることもあります。上記で説明したように若者は転んだ際に手が先に出るので、肩をぶつけてしまうことはよっぽどありません。
骨粗しょう症
一般的に転倒やぶつかった程度では骨折することは少ないです。高齢になっていき、かつ骨密度が低くなることで、軽い転倒でも骨折が起きやすくなります。また、女性の閉経後は骨密度が低下しやすいため発生頻度が多くなります。

症状と見分け方
骨折直後は次のような症状が現れます。
- 肩周囲の激しい痛み
- 腫れと皮下出血(あざ)
- 肩を動かすことができない
- 上腕部の変形(重度な場合)
- 肘から先は動いても、肩を上げられない
肩が上がらない・腕の重みで痛い・動かせないなどの訴えが典型的です。
とにかく、転んだ・ぶつけたなどがあればすぐに病院へ行ってください。本来は整形外科に行くべきですが、固定くらいは内科などでもしてくれることがあるため、とにかく近くの病院へすぐに向かってください。
診断方法
問診と視診・触診
痛みの経緯や転倒の仕方を確認し、腫れや変形の有無をチェックします。
経緯を説明すればだいたいレントゲンを撮って確認してくれます。
X線(レントゲン)検査
基本の検査です。骨の折れ方やずれ(転位)の程度を把握します。
治療法:保存療法と手術療法
治療方針は、「骨折のズレの程度」「年齢」「活動レベル」「利き腕かどうか」などによって決まります。
✅ 保存療法(手術しない治療)
**骨折のズレが少ない場合(非転位骨折)**は、手術せずに自然治癒を待つ方法が取られます。
保存療法の流れ
- 三角巾や装具(デゾー固定)で2~4週間安静
- 痛みが軽くなったら可動域訓練を開始
- 約6~8週間で骨癒合
ただし、**関節拘縮(関節が固まる)**のリスクがあるため、早期リハビリが重要です。
肘から上は基本的に動かしてはいけません。肘から下は骨折した骨と別になるため、動かしても大きな問題はありません。しかし、痛い場合は動かさないことが一番です。
また、手はしっかりと動かしておきましょう。手首が固まってしまう。指が固まってしまうことが多くあるため、動かすことをお勧めします。

✅ 手術療法
骨折が複雑・大きくずれている・粉砕している場合や、保存療法では治癒が見込めないと判断された場合に選択されます。
主な手術方法
- 髄内釘固定(骨の内側に金属棒を入れる)
- プレート固定(骨の外に金属プレートを付ける)
- 人工骨頭置換術(近年ではリバース型人工肩関節が多くなってきている)

術後は早期からリハビリ開始となることが多く、可動域を取り戻すことが目標です。
リハビリと可動域訓練の重要性
上腕骨近位端骨折の最大の課題は、「肩関節の拘縮」です。
肩は非常に可動域が広く、構造が複雑な関節であるため、使わない期間が長いとすぐに動かなくなってしまいます。
リハビリの進行例
期間 | 内容 |
---|---|
1~2週目 | 痛みを避けつつ、肘・手首・手指の運動 |
2~3週目 | 肩関節の振り子運動・自動介助運動 |
4週目以降 | 可動域訓練の本格化、筋力トレーニング開始 |
8週目以降 | 日常生活動作の練習、重い物の持ち上げ訓練など |
「痛みが引いてから動かす」ではなく、「痛みの中でも少しずつ動かす」が原則です。
ただし、骨折したところがズキズキする場合はすぐにやめてください。
高齢者に多い理由と注意点
上腕骨近位端骨折は、特に女性の高齢者に多いとされています。その理由は以下の通りです。
- 骨粗しょう症により骨がもろくなっている
- 筋力やバランス能力の低下により転倒しやすい
- 反射的に手をつけず、肩から倒れこむ
転倒予防がカギ
- 家の中の段差や滑りやすい場所をなくす
- バリアフリー化
- 骨密度検査を定期的に受ける
- ロコモ予防の運動(スクワットや片脚立ちなど)
予後と社会復帰の目安
一般的に骨癒合は6~8週間で起こりますが、肩の可動域の回復には3か月~半年かかることもあります。
社会復帰の目安
状態 | 目安時期 |
---|---|
通常の家事動作 | 約2~3か月 |
デスクワーク | 約1か月 |
力仕事・スポーツ | 3~6か月以降(回復具合による) |
まとめ
上腕骨近位端骨折は、加齢や転倒に伴って誰でも起こりうる骨折です。特に高齢者では再発のリスクやリハビリの遅れが生活の質に直結します。
✅ 早期診断と適切な治療
✅ 症状に合わせた保存 or 手術療法
✅ リハビリの継続と意識的な動き
✅ 転倒・骨粗しょう症の予防
これらを意識することで、より早い社会復帰や日常生活の質の向上が期待できます。
最後に
肩の骨折は「すぐには日常生活に戻れない」難しさがあります。だからこそ、**治療後のリハビリと予防対策が未来を変えます。**少しでも「肩が上がりにくい」と感じたら、無理せず整形外科を受診しましょう。
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