膝蓋骨骨折とは?原因・症状・治療法・リハビリまで徹底解説


膝を強く打った後に歩けない、膝が腫れて痛みが取れない。そんな時に疑われるのが「膝蓋骨骨折(しつがいこつこっせつ)」です。膝蓋骨は、いわゆる「膝のお皿」と呼ばれる骨で、膝の中心に位置する非常に重要な骨です。

この記事では、膝蓋骨骨折の原因・症状・診断・治療法・リハビリ・予後について、専門的な知識をやさしく解説していきます。特にスポーツや交通事故、転倒などで膝を強打した経験がある方には必見の内容です。


膝蓋骨の役割とは?

膝蓋骨は、大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)と脛骨(すねの骨)をつなぐ腱(膝蓋腱)の中に埋め込まれた骨で、膝関節の前面に位置します。この骨は、「滑車」のような役割を果たし、膝を伸ばす力を効率よく伝えるための重要な部品です。

膝蓋骨があることで、膝を伸ばす筋肉の力が数割増しになり、歩く、走る、しゃがむなどの日常動作がスムーズに行えるようになります。


膝蓋骨骨折の主な原因

膝蓋骨骨折は、主に以下の2つのタイプの外力によって発生します。

直接外力による骨折(直達外力)

  • 交通事故で膝をダッシュボードに強打
  • 転倒してコンクリートや階段の角に膝をぶつけた場合
  • スポーツ中の激突など

この場合は、膝蓋骨に直接強い衝撃が加わるため、粉砕骨折(骨が複数に砕ける)となることが多いです。

間接外力による骨折(介達外力)

  • 高所からの着地で太ももの筋肉(大腿四頭筋)が急激に収縮
  • 階段を踏み外して膝が不自然に伸ばされたとき

このような場合、膝蓋骨は引き裂かれるように折れ、横骨折が起こりやすくなります。


膝蓋骨骨折の症状

膝蓋骨骨折を起こすと、以下のような症状が現れます。

  • 膝の前面に強い痛み
  • 膝の腫れ(関節内出血)
  • 膝を伸ばせない、もしくは歩けない
  • 触れると激痛
  • 骨の不整やへこみを触れることもある
  • 膝の変形(凹みや出っ張り)

中でも、「膝を自分の力で伸ばせない」というのは、腱が切れて骨がずれてしまっている証拠であり、手術が必要な重症例の可能性があります。


診断方法

診断には主にX線(レントゲン)検査が用いられます。必要に応じて、CTスキャンで骨の破片の状態を詳しく調べたり、MRIで膝蓋腱や軟部組織の損傷を確認することもあります。


膝蓋骨骨折の分類

膝蓋骨骨折は、以下のように分類されます。

分類特徴
横骨折骨が水平に割れる。筋肉の引張でズレやすい
縦骨折骨が縦に割れる。比較的安定
粉砕骨折骨が複数の破片に砕ける。手術が必要なことが多い
極部骨折上端または下端だけが折れる。腱の損傷を伴うことも

膝蓋骨骨折の治療法

保存療法(手術なし)

骨折のズレが少なく、膝の伸展機能(膝を伸ばす力)が保たれている場合は、保存療法が選択されます。

  • ギプスや装具による固定(4〜6週間)
  • 松葉杖などによる免荷
  • リハビリによる関節拘縮の予防

ただし、固定期間が長くなると**膝が固くなる(拘縮)**ため、慎重に可動域訓練を始めることが重要です。

手術療法(観血的整復固定術)

以下のようなケースでは、手術が必要となります。

  • 骨折のズレが大きい(2〜3mm以上)
  • 骨が粉砕されている
  • 自力で膝を伸ばせない(伸展機能の消失)

手術では、鋼線やスクリューで骨を固定する方法(テンションバンド法やスクリュー固定法など)が行われます。破片が多すぎて固定困難な場合は、部分的に骨を摘出することもあります。


リハビリと回復までの流れ

急性期(術後〜2週)

  • 安静と患部の固定
  • アイシング・挙上による腫れの軽減
  • 足首の運動や大腿四頭筋の軽い収縮練習(筋萎縮予防)

可動域回復期(2〜6週)

  • 膝関節の屈伸運動を少しずつ再開
  • 固定を外して装具に移行
  • 大腿四頭筋トレーニングの強化

筋力・歩行訓練期(6〜12週)

  • 体重を徐々にかける
  • 正常歩行への移行
  • 階段昇降やバランストレーニング

スポーツ復帰期(3〜6ヶ月)

  • ジョギングやジャンプなどの動作練習
  • スポーツ別の専門的リハビリ

合併症や注意点

膝蓋骨骨折後には以下のような合併症が起こる可能性があります。

  • 関節拘縮(膝が曲がらない・伸びない)
  • 膝蓋骨の偽関節(骨がくっつかない)
  • 膝蓋腱の断裂や機能障害
  • 変形性膝関節症の進行
  • 術後の金属プレートの違和感

術後の違和感が強い場合、抜釘手術(固定金具を抜く)を行うこともあります。


膝蓋骨骨折の予後と生活への影響

膝蓋骨骨折の予後は、適切な治療とリハビリによってかなり良好です。ただし、高齢者や糖尿病患者では骨癒合が遅れることがあるため注意が必要です。

また、術後に膝の曲げ伸ばしがスムーズにできるようになるまでには、数ヶ月以上のリハビリが必要なこともあります。日常生活やスポーツに復帰するまで、焦らず地道に取り組むことが大切です。


まとめ

膝蓋骨骨折は、日常生活でもスポーツ中でも起こりうるケガです。「ただの打撲」と思って放置すると、膝の機能が大きく損なわれる可能性があります。膝に強い痛みがある、伸ばせない、腫れているといった症状がある場合は、早めに整形外科を受診することが大切です。

適切な治療と根気強いリハビリによって、多くの人が元の生活に復帰できます。膝を大切に、無理のないリカバリーを心がけましょう。


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