はじめに
近年、日本の夏は厳しさを増し、35℃を超える猛暑日が続くことも珍しくありません。そんな中で問題となるのが熱中症です。熱中症は体温の上昇によって発症し、めまい・吐き気・頭痛から重症化すると意識障害や臓器障害にまで至る危険があります。
熱中症や暑さによる体調不良を防ぐためには「効率よく身体を冷やす」ことが欠かせません。しかし「どこを冷やせば効率的なのか?」を知らない人は多いのではないでしょうか。
本記事では、人体の構造や体温調節の仕組みに基づき、暑い夏に身体を効果的に冷やすべき部位とその方法を徹底解説していきます。
人体の体温調節の仕組み
人間の身体は恒温動物であり、平常時は36〜37℃前後に体温を保つよう調整されています。体温が上がりすぎると、体は汗をかき、それを蒸発させて熱を逃がします。また、血管を広げて皮膚表面から熱を放散する仕組みも働きます。
しかし、外気温が高く湿度も高い夏場は、
- 汗が蒸発しにくい(湿度が高いと汗は気化しない)
- 空気が体より熱い(放熱できない)
という状態になり、体温が上がりやすくなります。
そのため、外部から「積極的に冷やす」必要が出てくるのです。
効率的に冷やすべき身体の部位とは?

全身を無差別に冷やすのではなく、血流が豊富な部分=太い血管が通っている部位を冷やすことが重要です。これらを冷やすと血液自体の温度が下がり、冷えた血液が全身を巡ることで体温を効率的に下げられます。
首(頸動脈)
首の両側には大きな血管である頸動脈が走っています。ここを冷やすと冷えた血液が脳へ送られ、頭部の温度を下げることができます。
- 保冷剤や冷却タオルを首に巻く
- 濡れたタオルを当てる
特に脳は熱に弱いため、首の冷却は熱中症予防において非常に重要です。

脇の下(腋窩動脈)
脇の下には腋窩動脈という太い血管があり、心臓へ戻る血流を効率的に冷やすことが可能です。
- アイスパックを脇に挟む
- 冷却材をタオルで巻いて当てる
医療現場でも、熱中症で意識がない人を搬送する際には「脇の下を冷やす」処置が行われます。
太ももの付け根(大腿動脈)
太ももの内側には大腿動脈が通っており、ここを冷やすことで下半身全体の血液を効率よく冷却できます。
- 保冷剤をタオルで巻いて太ももの付け根に当てる
- 椅子に座った状態でアイスパックを挟む
特に運動後や体温が高いときに効果的です。

手首(橈骨動脈)
手首の親指側には橈骨動脈が走っています。ここは皮膚のすぐ下に血管があるため冷却効果が得やすい部位です。
- 冷たい水で手首を冷やす
- 氷水に手首を浸す
小さな子どもでも行いやすく、手軽な方法としておすすめです。
手のひら
手のひらは血管こそ細いですが、かなり多く動脈が走っています。そのためここを冷やすことで全身を冷やすことが出来ます。
あとなにより、一番簡易的です。何か冷たいものを握るだけでクーリング出来ます。
足首(後脛骨動脈)
足首の内側には後脛骨動脈があります。足は心臓から遠いため熱がこもりやすく、冷やすことで全身のクールダウンにつながります。
- 冷水で足首を洗う
- 足浴(冷たい水に足をつける)
部位別クーリング方法の具体例
首を冷やす方法
- 濡れタオルを巻く
- ネッククーラー(保冷剤入りのバンド)を使用
- 冷感スプレーをかけたタオルで覆う
脇の下を冷やす方法
- 保冷剤をタオルで巻き、脇に挟む
- 冷却ジェルパッドを使用
太ももの付け根を冷やす方法
- アイスパックをタオルで巻いて股関節部に当てる
- 長時間は避け、10〜15分を目安にする
手首・足首を冷やす方法
- 流水で冷やす(シャワー・水道水)
- 冷たい水に手足を浸す(手浴・足浴)
熱中症対策としてのクーリング実践例
日常生活で
- 外から帰宅したらまず手首や足首を冷たい水で洗う
- 冷感タオルを首にかける
- 夜寝苦しいときは保冷剤をタオルに包んで首の後ろに当てる
運動時に
- ウォーミングアップ前に首や脇を軽く冷却し、体温上昇を予防
- 運動の合間にアイスベストや冷却タオルを使用
- 終了後は必ず首・脇・太ももの付け根を重点的に冷やす
熱中症が疑われる場合
- 涼しい場所に移動し衣服を緩める
- 首・脇・太ももの付け根をアイスパックで冷却
- 意識がある場合は水分・塩分補給
- 意識がない場合はすぐに救急要請
冷やすときの注意点
- 直に氷を当てない:凍傷の危険があるため、必ずタオルで巻く
- 長時間当てない:10〜15分程度を目安に、間隔をあける
- 体の冷やしすぎに注意:体温が下がりすぎると寒気や震えを起こすことがあります
- 小児や高齢者には慎重に:体温調節機能が弱いので冷やしすぎないよう配慮する
最新のクーリンググッズも活用
- ネッククーラー(冷却剤入りバンド)
- アイスベスト
- 冷感スプレー
- 冷却ジェルシート
これらを活用することで、屋外活動や通勤・通学時にも手軽にクーリングできます。
まとめ
暑い夏に身体を効率よく冷やすためには、血管が集中している部位を狙うのがポイントです。
- 首(頸動脈)
- 脇の下(腋窩動脈)
- 太ももの付け根(大腿動脈)
- 手首(橈骨動脈)
- 足首(後脛骨動脈)
これらを冷やすことで体温を効率的に下げ、熱中症を予防することができます。
正しい部位を理解し、日常生活や運動時にうまく取り入れることで、暑い夏を安全に快適に過ごせるでしょう。
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