はじめに
夕方になると靴がきつく感じたり、足首のくびれが消えてしまったり、「足がむくんでいる」と感じる方は少なくありません。特にデスクワークや立ち仕事をしている人、長時間移動をした人は夕方の足のむくみを実感しやすいでしょう。
ではなぜ、足のむくみは「夕方」に強く出るのでしょうか?本記事では、むくみの仕組みから原因、考えられる病気、改善方法まで詳しく解説していきます。
「むくみ」とは何か?

むくみは医学的には「浮腫(ふしゅ)」と呼ばれます。
本来、体内の水分は血管やリンパ管を通じて循環していますが、何らかの原因でそのバランスが崩れると、細胞と細胞の間(間質)に水分がたまり、皮膚がパンパンと膨らんだ状態になります。これが「むくみ」です。
むくみの特徴
- 押すと指の跡が残る(圧痕性浮腫)
- 足首やふくらはぎに出やすい
- 長時間立ったり座ったりした後に強くなる
- 朝より夕方に強くなる傾向
むくみは一時的で問題ないこともありますが、場合によっては心臓・腎臓・肝臓などの病気が隠れていることもあります。そのため「よくあること」と軽視せず、原因を理解して対策することが重要です。
夕方に足がむくむメカニズム
なぜむくみは夕方に出やすいのでしょうか?
それは「重力」と「循環の仕組み」が関係しています。
重力の影響
人間は立っているとき、心臓より下にある足には血液や水分が下がりやすくなります。特に、静脈血は心臓に戻る力が弱いため、足に滞りやすいのです。
日中活動している間にどんどん足に水分がたまり、夕方にはその量がピークに達して「むくみ」として現れます。
静脈の働き
静脈には血液が逆流しないように「静脈弁」がありますが、長時間立ち続けたり座り続けたりすると、その働きが弱まり、血液が下にたまりやすくなります。
いわゆる「下肢静脈うっ滞」がむくみの原因です。
リンパの流れ
リンパ管は老廃物や余分な水分を回収する役割を持っていますが、リンパの流れも筋肉の収縮(特にふくらはぎの筋肉ポンプ作用)に依存しています。運動不足や同じ姿勢の持続でリンパの流れが滞り、むくみを助長します。
日常生活における夕方のむくみの原因
長時間の立ち仕事・座り仕事
看護師や販売員など立ち仕事が多い人、デスクワークで座りっぱなしの人は夕方のむくみが出やすい典型例です。血液やリンパが下肢にたまりやすくなるためです。
塩分の取りすぎ
塩分を多く摂取すると、体はナトリウム濃度を下げようとして水分をため込みます。これにより、全身がむくみやすくなり、特に下肢に症状が出ます。
運動不足
ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」と呼ばれるほど、血液を心臓に戻すポンプの役割を担っています。運動不足で筋肉の働きが弱いと、血液や水分が滞り、むくみやすくなります。
水分不足や過剰
水分を取らなすぎると体が「水分を保持しよう」としてむくみやすくなります。一方で水分を過剰に取りすぎても処理しきれずにむくみます。バランスが大切です。
ホルモンバランス
特に女性では、生理前に黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で水分をため込みやすくなります。そのため夕方のむくみが強まることがあります。
病気が隠れている場合のむくみ
夕方の足のむくみが毎日強く出たり、朝になっても改善しない場合、病気が原因の可能性があります。
下肢静脈瘤
静脈の弁が壊れて血液が逆流し、足にたまる病気です。夕方のむくみ、だるさ、こむら返り、血管のボコボコが特徴です。
心不全
心臓のポンプ機能が低下すると、全身に血液を送り出せなくなり、特に下肢に水分がたまります。息切れや体重増加を伴う場合は要注意です。
腎臓病
腎臓は余分な水分を尿として排出する臓器です。機能が落ちると水分や塩分が体に残り、全身がむくみます。
肝臓病
肝臓が弱るとアルブミン(血液中のタンパク質)が減り、水分が血管外に漏れやすくなります。腹水や下肢のむくみが出ます。
甲状腺疾患
甲状腺機能低下症では、全身の代謝が落ち、水分を保持しやすくなります。皮膚が硬く腫れる特徴的なむくみ(粘液水腫)が出ることもあります。
むくみを放置するとどうなる?
- 慢性的な足の重だるさや疲労感
- 皮膚の炎症や色素沈着
- 下肢静脈瘤や皮膚潰瘍へ進行
- 病気の悪化のサインを見逃す
「ただのむくみ」と軽視して放置すると、生活の質を下げたり、深刻な病気のサインを見逃す危険があります。
夕方のむくみを改善する方法
姿勢・運動

- こまめに足首を動かす(かかと上げ・つま先上げ)
- 1時間に1回は立ち上がって歩く
- エレベーターより階段を使う
足を高くする
帰宅後や就寝前に、足を心臓より高い位置に上げると血液が戻りやすくなります。枕やクッションを活用しましょう。
弾性ストッキング
医療用の着圧ストッキングは、静脈の流れを助け、むくみ予防に効果的です。
食生活の工夫
- 塩分を控える
- カリウムを含む食品(バナナ、ほうれん草、アボカドなど)を摂る
- 適度に水分を取る(1.5L前後が目安)
マッサージ・入浴
- 足先から心臓に向かって軽くさする
- ぬるめのお湯で半身浴をして血流を促す
※受診を考えるべきサイン
次のようなむくみがある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
- 片足だけが強くむくむ
- 朝になっても改善しない
- 息苦しさや体重増加を伴う
- 皮膚の色が変化している
- むくみが急激に悪化した
これらは病気が原因の可能性が高いため、自己判断せず専門医に相談することが大切です。
まとめ
夕方の足のむくみは、多くの場合「重力による血液や水分の滞留」が原因ですが、生活習慣や食事の影響、さらには心臓・腎臓・肝臓などの病気が隠れていることもあります。
日常的に出る軽いむくみは、運動や食事改善、足を高くする工夫で和らげることができますが、慢性的・重度なむくみは医師に相談することが大切です。
「夕方になると足がパンパンになる」というサインは、体が発する小さなSOSかもしれません。今日からできる対策を取り入れて、軽やかな足で毎日を過ごしましょう。
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