― 私たちの記憶を司る脳の中枢を徹底解説 ―
「海馬(かいば)」という言葉を聞くと、多くの人が
記憶に関係する脳の部位
というイメージを持っているのではないでしょうか。
実際、海馬は記憶の形成・整理・空間認知に深く関わる、非常に重要な脳領域です。
アルツハイマー型認知症をはじめとする多くの神経疾患でも、最初に障害を受けやすい部位として知られています。
この記事では、
- 海馬の位置と構造
- 海馬の具体的な役割
- 記憶との関係
- 海馬がダメージを受けるとどうなるのか
- 海馬を守る・鍛えるための生活習慣
までを、できるだけわかりやすく、かつ医学的根拠を踏まえて詳しく解説していきます。
海馬とはどこにあるのか?
海馬は大脳辺縁系と呼ばれる領域の一部で、左右の脳に1つずつ存在します。
位置としては、
- 脳の内側
- 側頭葉の奥深く
- 親指ほどの大きさ
にあり、形が**タツノオトシゴ(英語で Hippocampus)**に似ていることから、この名前が付けられました。
大脳皮質のように目立つ場所ではありませんが、脳の深部で重要な情報処理を行う中枢です。
海馬の最大の役割:記憶の形成
短期記憶から長期記憶への変換
海馬の最も有名な役割は、
短期記憶を長期記憶へ変換することです。
例えば、
- 今日誰と会ったか
- さっき読んだ文章の内容
- 新しく覚えた人の名前
これらは一度「短期記憶」として保持され、その後海馬を経由して長期記憶として脳内に定着します。
海馬が正常に働いていないと、
- 覚えたはずのことをすぐ忘れる
- 新しい記憶が蓄積されない
といった状態になります。
エピソード記憶を司る
海馬は特にエピソード記憶と深く関係しています。
エピソード記憶とは、
- いつ
- どこで
- 誰と
- 何をしたか
といった、体験と感情を伴う記憶のことです。
「初めて行った旅行の思い出」
「学生時代の出来事」
「昨日の夕食の内容」
こうした記憶は、海馬なしでは形成されません。
海馬と空間認知能力
海馬は記憶だけでなく、空間認知にも重要な役割を果たしています。
道を覚える能力
- 目的地までの道順
- 建物の配置
- 自分が今どこにいるか
こうした「空間の地図」を脳内で作る働きが海馬にはあります。
ロンドンのタクシー運転手は、長年の運転経験によって海馬が大きくなることが研究で報告されており、海馬と空間認知の関係を示す有名な例です。
海馬がダメージを受けるとどうなる?
記憶障害
海馬が損傷すると、特に次のような症状が現れます。
- 新しいことを覚えられない(前向性健忘)
- 同じ話を何度も繰り返す
- 直前の出来事を忘れる
過去の記憶は比較的保たれる一方で、新しい記憶が作れなくなるのが特徴です。
アルツハイマー型認知症との関係
アルツハイマー型認知症では、最初に海馬が萎縮します。
そのため、
- 最近の出来事を忘れる
- 物忘れが増える
といった症状から始まることが多いのです。
MRI検査では、海馬の萎縮が診断の重要な指標として使われています。
海馬は再生する?「神経新生」という希望
かつて脳細胞は再生しないと言われていましたが、
現在では海馬では神経新生が起こることが分かっています。
つまり、
- 生活習慣
- 環境
- 運動や刺激
によって、海馬の機能は改善・維持できる可能性があるのです。
海馬を守り、鍛える生活習慣
有酸素運動
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、
- 海馬の血流を改善
- 神経新生を促進
することが科学的に示されています。
週3〜5回、30分程度の運動が理想です。
良質な睡眠
睡眠中、海馬は
- 記憶の整理
- 情報の定着
を行っています。
睡眠不足は、海馬の機能低下を直接引き起こすため、記憶力低下の大きな原因になります。
ストレス管理
慢性的なストレスは、ストレスホルモン(コルチゾール)を増加させ、
海馬の萎縮を招くことが知られています。
- 瞑想
- 深呼吸
- 趣味の時間
などで、意識的にストレスを軽減することが重要です。
学習と刺激
- 新しいことを学ぶ
- 読書
- 計算やパズル
などの知的刺激は、海馬を活性化させます。
「慣れたこと」だけでなく、少し難しいことに挑戦するのがポイントです。
まとめ:海馬は人生の記憶を支える中枢
海馬は、
- 記憶を作り
- 経験を蓄え
- 自分がどこにいるのかを理解する
という、人間らしさの根幹を担う器官です。
年齢とともに機能は低下しやすいものの、
生活習慣次第で守り、鍛えることができる希望のある脳部位でもあります。
日々の運動、睡眠、学習を大切にすることが、
将来の記憶と人生の質を守る第一歩になるのです。

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