前頭葉に障害が起きたときの問題とは?

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― 高次脳機能障害の中核をなす「見えにくい障害」を徹底解説 ―

脳の中でもとりわけ重要な役割を担うのが「前頭葉」です。前頭葉は思考、判断、感情のコントロール、意欲、社会性など、人間らしさを支える中枢です。この領域に障害が起こると、単なる身体麻痺とは異なる“見えにくい障害”が現れます。

それが 高次脳機能障害 です。

本記事では、前頭葉の解剖学的基礎から、障害によって起こる具体的症状、診断、リハビリテーション、社会復帰支援までを、医療・リハビリ視点で詳しく解説します。


前頭葉とは何か? ― 脳の司令塔の役割 ―

前頭葉は大脳の最前部に位置し、脳全体の約3分の1を占めています。人類の進化の中で最も発達した部位とも言われています。

前頭葉は大きく次の領域に分けられます。

背外側前頭前野(DLPFC)

  • 計画立案
  • 問題解決
  • ワーキングメモリ
  • 論理的思考
  • 遂行機能

「段取り力」を司る中枢です。


眼窩前頭皮質(OFC)

  • 感情制御
  • 衝動抑制
  • 社会的判断
  • 報酬・罰の評価

社会生活を円滑に送るための“ブレーキ”機能を担います。


内側前頭前野・前部帯状回

  • 意欲
  • 動機づけ
  • 自発性
  • 注意の維持

ここが障害されると、強い無気力(アパシー)が出現します。


運動前野・一次運動野

前頭葉後方には運動野が存在し、随意運動を司ります。
しかし本記事では、主に「高次機能」に関わる前頭前野に焦点を当てます。


前頭葉障害の原因

前頭葉障害はさまざまな病態で生じます。

  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • くも膜下出血
  • 頭部外傷(交通事故など)
  • 低酸素脳症
  • 脳腫瘍
  • 神経変性疾患

特に若年層で問題となるのが頭部外傷後の障害です。

また神経変性疾患の代表例として
前頭側頭型認知症があります。


前頭葉障害で生じる主な症状

前頭葉障害の特徴は、身体機能よりも「行動・人格面」の変化が目立つことです。

遂行機能障害

最も代表的な症状です。

具体例

  • 物事の段取りが組めない
  • 優先順位がつけられない
  • 複数課題を同時に処理できない
  • 作業が途中で止まる

例:
料理を作る際、材料を切る前に火をつける、途中でテレビを見始めてしまう、完成まで至らない。

これは背外側前頭前野の障害で起こります。


注意障害

  • 集中力の低下
  • 気が散りやすい
  • ケアレスミスの増加
  • 作業効率の低下

職場復帰後に顕在化しやすい症状です。


社会的行動障害

眼窩前頭皮質の障害で見られます。

  • 空気が読めない
  • 不適切発言
  • 攻撃的になる
  • 共感性の低下
  • 万引きや浪費など衝動的行動

「人が変わってしまった」と家族が感じるケースも少なくありません。


脱抑制(衝動性)

本来かかるはずのブレーキが外れます。

  • 思ったことをすぐ言う
  • 感情爆発
  • 性的逸脱行動
  • 無計画な買い物

社会トラブルにつながることもあります。


アパシー(無気力)

内側前頭前野の障害で起こります。

  • 何もしたがらない
  • 指示待ちになる
  • 興味関心の消失
  • 表情の乏しさ

うつ病と誤診されることもありますが、抑うつ気分よりも「意欲回路の障害」が本質です。


病識欠如

自分の障害を自覚できない状態です。

  • 「自分は大丈夫」と言う
  • 問題を他人のせいにする
  • リハビリ拒否

これが支援を難しくする最大の要因です。


高次脳機能障害とは何か?

高次脳機能障害とは、

脳の器質的損傷によって記憶・注意・遂行機能・社会行動などが障害され、日常生活や社会生活に支障が生じる状態

を指します。

厚生労働省が支援対象として明確に定義しています。

前頭葉障害はその中心的存在です。


日常生活への影響

■ 仕事面

  • 業務手順を覚えられない
  • 締め切り管理ができない
  • 同時作業で混乱
  • 上司の指示を誤解

能力はあるのに評価が下がるケースが多いです。


■ 家庭内

  • 金銭管理不能
  • 子どもへの不適切対応
  • 家事の効率低下
  • 夫婦関係悪化

■ 社会生活

  • 対人トラブル
  • 孤立
  • 失職
  • 法的問題

身体が元気な分、「怠け」「性格の問題」と誤解されやすいのが特徴です。


診断と評価方法

前頭葉障害は画像だけでは分かりにくい場合があります。

検査

  • 神経心理学検査
  • 遂行機能検査(例:BADS)
  • 注意機能検査
  • 行動観察評価
  • 家族からの聞き取り

MRIで異常が軽微でも、症状が強い場合があります。


リハビリテーション

前頭葉障害は「訓練+環境調整」が鍵です。


認知リハビリ

  • 手順の分解
  • チェックリスト活用
  • 外部記憶装置(スマホ・メモ)

環境構造化

  • 予定を視覚化
  • 刺激を減らす
  • ルーティン化

行動療法的アプローチ

  • 良い行動の強化
  • クールダウン時間設定
  • トリガー回避

家族教育

「性格」ではなく「脳の機能障害」である理解が不可欠です。


前頭側頭型認知症との違い

前頭側頭型認知症では、前頭葉から変性が進行します。

特徴

  • 性格変化
  • 脱抑制
  • 常同行動
  • 若年発症

外傷後障害と異なり、進行性である点が大きな違いです。


社会的支援制度

日本では高次脳機能障害支援拠点機関が各都道府県に設置されています。

利用できる制度:

  • 障害者手帳
  • 障害年金
  • 就労移行支援
  • 就労継続支援

社会資源の活用が重要です。


まとめ

前頭葉に障害が起きると、

  • 段取りができない
  • 感情が抑えられない
  • やる気が出ない
  • 社会生活が困難になる

これらはすべて高次脳機能障害の症状です。

前頭葉障害は見えにくく、誤解されやすい障害です。
しかし、

  • 早期診断
  • 適切なリハビリ
  • 環境調整
  • 周囲の理解

によって改善・適応は十分可能です。


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