医療機関で体の中を調べるときによく聞く「レントゲン」「CT」「MRI」。これらはすべて体の内部を画像として見るための検査ですが、それぞれ使い道や仕組み、得意な分野が異なります。
この記事では、医療現場で頻繁に使われるレントゲン・CT・MRIの違いについて、分かりやすく解説していきます。検査を受ける際に不安がある方や、健康や医療に興味がある方にとって役立つ情報をお届けします。
そもそも画像検査とは?
画像検査(画像診断)とは、体の内部構造や異常を視覚的に確認するための検査のことを指します。病気の診断や治療の経過観察などに欠かせない検査で、目に見えない体の中を非侵襲的(切らずに)に観察できるのが最大のメリットです。
代表的な画像検査には以下のようなものがあります。
検査名 | 検査方法 | 特徴 |
---|---|---|
レントゲン(X線) | X線を使って撮影 | 骨折や肺炎などの診断によく使われる |
CT(Computed Tomography) | X線を使い、断面画像を作成 | 細かい構造が立体的に見える |
MRI(Magnetic Resonance Imaging) | 磁気と電波を利用 | 脳・脊髄・関節などの描出に優れる |
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
レントゲン(X線検査)とは?
■ レントゲンの仕組み

レントゲンは「X線」という放射線を体に照射し、透過度の違いを画像にする検査です。骨などの硬い組織はX線を通しにくいため白く、空気の多い肺は通しやすいため黒く写ります。
■ 主な用途
- 骨折の確認
- 肺炎、気胸、結核などの胸部疾患の診断
- 腸閉塞や胃潰瘍などの消化管疾患の一部
■ メリット・デメリット
メリット
- 撮影時間が短く、手軽に受けられる
- 費用が安価
- 全国どこでも受けられる
デメリット
- 平面的な画像で、細かい構造はわかりにくい
- 軟部組織(筋肉・靱帯・脳など)は写りにくい
- 少量だが放射線被曝がある
CT(コンピュータ断層撮影)とは?
■ CTの仕組み
CTはX線を360度方向から照射し、体の断面をコンピュータ処理して画像にする検査です。いわば「輪切り画像」を連続的に撮影し、3D構造として再構成できます。

■ 主な用途
- 頭部外傷や脳出血の確認
- 肺がんや肝臓がんなどの腫瘍の精密検査
- 骨盤骨折や内臓損傷の確認
- 血管の狭窄(CT血管造影)
■ メリット・デメリット
メリット
- 断面画像で詳細な構造を把握できる
- 骨・肺・内臓など幅広く対応できる
- 緊急時(事故や脳卒中)に迅速な診断が可能
デメリット
- 比較的高額(保険適用でも数千円)
- 放射線被曝量が多め
- 妊婦や小児には慎重に使用される
MRI(磁気共鳴画像)とは?
■ MRIの仕組み
MRIは磁場とラジオ波(電波)を使って水分の分布や動きを測定し、画像化する検査です。X線などの放射線は使用しません。組織ごとの水分含量の違いを利用するため、軟部組織の描出に優れています。

■ 主な用途
- 脳腫瘍、脳梗塞、多発性硬化症などの脳疾患
- 椎間板ヘルニア、脊髄損傷などの脊椎疾患
- 靱帯損傷、半月板損傷などの関節疾患
- 前立腺や子宮、卵巣などの骨盤内臓器の精密検査
■ メリット・デメリット
メリット
- 放射線を使わない(被曝がない)
- 軟部組織の描写に優れる
- 特定の撮像条件で病変の性質を見分けられる
デメリット
- 検査時間が長い(20~60分)
- 閉所恐怖症の方にはつらいことがある
- ペースメーカー・金属製インプラントは制限あり
- 機械音が大きい
レントゲン・CT・MRIの比較表
項目 | レントゲン | CT | MRI |
---|---|---|---|
使用する原理 | X線 | X線+コンピュータ | 磁気+電波 |
被曝の有無 | あり(少量) | あり(やや多い) | なし |
得意な部位 | 骨・肺 | 内臓・骨・脳など全般 | 脳・脊髄・関節・軟部組織 |
検査時間 | 数秒~数分 | 数分 | 20~60分 |
検査中の音 | 静か | やや機械音あり | 大きな騒音あり |
費用(目安) | 約1,000~2,000円 | 約5,000~10,000円 | 約8,000~15,000円 |
禁忌 | 妊娠中は注意 | 妊娠中は注意 | 金属が体内にある場合は注意 |
どの検査が適しているのか?
■ 症状や疑いに応じて選択される
医師は症状や疑われる病気に応じて、最も適切な画像検査を選びます。たとえば…
- 骨折の確認 → レントゲン
- 脳出血の評価 → CT(急性期)またはMRI(慢性期)
- 椎間板ヘルニア → MRI
- がんの転移や広がりの確認 → CTやMRI
複数の検査を組み合わせて使うことも珍しくありません。たとえば「レントゲンで異常があったので、さらに詳しくCTやMRIを行う」というように、段階的に検査されます。
患者として知っておくとよいこと
● 被曝について
CTやレントゲンには放射線が使われるため、「被曝が怖い」と不安になる方もいます。しかし、現代の医療では最小限の被曝量で最大の情報を得られるよう設計されており、医師が必要と判断している場合にはそのリスクを上回るメリットがあります。
● 検査にかかる時間や音
MRIは特に時間が長く、検査中に大きな音がするため、初めて受ける方は驚くことがあります。不安がある方は、事前に説明を受け、耳栓やヘッドホンなどを使うと安心です。
● 金属製品に注意
MRI検査では体内や衣類に金属があると危険なので、ピアスや時計、下着のワイヤー、磁気カードなどを外して検査に臨みましょう。
まとめ
検査名 | 特徴 | 向いている状況 |
---|---|---|
レントゲン | 手軽・速い・安い | 骨折、肺炎、関節の確認 |
CT | 断層画像・立体的 | 内臓・脳出血・がん |
MRI | 被曝なし・軟部組織に強い | 脳、脊椎、靱帯、腫瘍など |
どの画像検査も一長一短があります。大切なのは**「どんな症状・目的で」「何を確認したいのか」**に応じて、最も適した検査を受けることです。疑問や不安がある場合は、遠慮せず医師に相談しましょう。
自分の健康を守るためにも、これらの検査の違いや特徴を知っておくことはとても重要です。
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