プロ野球界のトップ投手の一人であり、MLBシカゴ・カブスで活躍中の今永昇太投手が、2025年シーズン途中に「ハムストリングスの張り」により戦線離脱したことは、日米の野球ファンに大きな衝撃を与えました。
今回は、彼が経験したこの怪我「ハムストリングスの損傷」について、原因、仕組み、治療、リハビリ、そして再発防止の観点から、詳しく解説していきます。
今永昇太投手の怪我の概要
今永投手が怪我を負ったのは、2025年6月下旬。試合中に異変を感じ、途中降板。その後「右ハムストリングスの張り(tightness)」と発表され、数試合の登板を回避しました。
ハムストリングスの張りとは?
「張り」とは、筋肉に過度な緊張や微細な損傷がある状態で、正式な診断名としては「Grade 1 のハムストリングス筋損傷」に相当します。完全断裂ではありませんが、無理をすれば重症化するリスクがあるため、慎重な対応が求められます。

ハムストリングスとはどんな筋肉か?
ハムストリングスは太ももの裏側に位置する3つの筋肉の総称です。
- 大腿二頭筋(長頭・短頭)
- 半腱様筋
- 半膜様筋

これらは股関節の伸展(脚を後ろに引く)や膝の屈曲(膝を曲げる)に関わる重要な筋肉で、野球選手にとっては「走る」「投げる」「踏ん張る」といったあらゆる動作に不可欠です。
特にピッチャーにおいては、リリース時の下半身の安定、ステップ足の伸展力、そしてスピードの源でもある“地面反力”の伝達経路として機能します。
なぜ今永投手はハムストリングスを痛めたのか?
今永投手のようなエリート投手であっても、ハムストリングスを痛める理由はいくつかあります。
投球フォームに伴う負担
ピッチャーの踏み込み脚(前足)は、ステップの瞬間に股関節の屈曲→伸展が急激に起こります。この時、ハムストリングスに大きな伸張性ストレスがかかります。
連戦や疲労の蓄積
ハムストリングスは「遅筋」と「速筋」が混在する筋肉で、過度な投球数や疲労が蓄積すると回復が遅れます。MLBの長丁場のシーズンでは、疲労の管理が非常に重要です。
常日頃から筋肉の疲労を取ることが大事です。クエン酸を摂取することや筋肉の血流を促すことがとても大事です。
クールダウン不足や柔軟性の低下
特に投球後のストレッチやアイシングを怠ると、筋肉の回復が遅れ、繰り返すうちに筋膜や腱の微細損傷に発展します。
ハムストリングス損傷の分類
怪我の程度により、一般的には以下のように分類されます。
グレード | 症状 |
---|---|
Grade 1 | 軽度な張りや違和感、走れるが痛みがある |
Grade 2 | 筋繊維の部分断裂。歩行やランニングに支障あり |
Grade 3 | 完全断裂。手術を要するケースも |
今永投手の場合は、グレード1または軽度のグレード2程度と推測されます。
怪我の診断と治療
【診断】
MRI検査で筋肉内の損傷部位や出血の有無を確認します。プロの世界では初期の段階で画像検査を行うことで、最悪の事態(断裂)を防ぎます。
【治療】
- 急性期(48~72時間)
アイシング・安静・圧迫・挙上(RICE処置) - 亜急性期(3日目~1週間)
軽いストレッチ、血流促進、電気治療 - 回復期(1~3週間)
筋力回復、可動域訓練、バランストレーニング - 復帰期(3~6週間)
段階的な投球動作への復帰、ランニング、実戦練習
今永投手のリハビリ内容(推定)
プロ野球選手の場合、専属のトレーナーと連携し、個別のリハビリプランが組まれます。今永投手のリハビリ例(推定)は以下の通りです。
初期(1週目)
- 安静とアイシング中心
- 痛みが引いたら低負荷の自転車エルゴメーター
- ストレッチは無理をしない範囲で
中期(2~3週目)
- ハムストリングスと大臀筋の筋力トレーニング
- 軽いジョギングやフォームチェック
- 投球動作の模擬トレーニング(シャドーピッチングなど)
後期(4週目以降)
- 60~80%強度のキャッチボール
- フルスプリント、ステップ動作の再習得
- 実戦形式での投球復帰
ハムストリングス損傷の再発率と予防策
ハムストリングスの怪我は「再発率が高い」ことでも知られています。
一部研究では、軽度損傷でも再発率は**20〜30%**とされています。

予防のポイント
- 柔軟性の維持(ハムストリングスストレッチ)
- 段階的な運動強度の増加
- お尻(大臀筋)との筋力バランスの調整
- フォームの見直し(ステップ足への負担軽減)
今永投手の今後に期待
幸いにも、今永投手は重症ではなく、チームも「数週間の調整」と発表しており、7月中には復帰が見込まれています。今シーズン序盤から圧巻のピッチングを続けてきた彼にとって、この離脱期間が再調整の時間となることを願うばかりです。
まとめ
- 今永昇太投手が負った「ハムストリングスの張り」は軽度の筋損傷であり、適切なケアとリハビリで早期復帰が期待されます。
- ハムストリングスは投手にとって極めて重要な筋肉であり、負担のかかる部位です。
- 怪我を防ぐためには、日々の柔軟性ケア、筋力バランスの見直し、フォーム改善などが不可欠です。
- 今永投手のようなトップ選手でも怪我と無縁ではないからこそ、我々も体のケアの大切さを学ぶべきでしょう。
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