はじめに
スポーツや日常生活の中で、足首を「グキッ」とひねった経験はありませんか?そんなとき、多くの人が経験するのが「内反捻挫(ないはんねんざ)」です。特にバスケットボール、サッカー、ランニングなど俊敏な動作を伴うスポーツでは、最も頻度の高いケガの一つとして知られています。
この記事では、内反捻挫の基礎知識から、症状、治療、リハビリ、そして再発予防までを丁寧に解説します。スポーツをしている方、ケガを繰り返してしまう方、子どもの足首のケガに悩む保護者の方にも役立つ情報をお届けします。
内反捻挫とは?
「捻挫(ねんざ)」とは、関節に過剰な力が加わって靭帯や関節包などの軟部組織が損傷される状態を指します。
皆さんは足首を捻る。と言われたらほとんどの方
こうなるのを想像しませんか?
足首は関節の構造上「内反」となりやすいです。そのため「内反捻挫」が最も一般的です。
内反とは?
「内反」とは、足首が内側にひねられる動きです。例えば、地面の段差で足をくじいたり、ジャンプの着地に失敗して足の外側に重心がかかったときに発生します。
原因と発生メカニズム
内反捻挫は、以下のような場面でよく見られます。
- スポーツ中のジャンプや着地の失敗
- 不整地でのランニングやウォーキング
- ハイヒールや滑りやすい床での転倒
- 足首の筋力・柔軟性の低下
解剖学的背景
足関節の外側には、以下の3つの靭帯があります。
- 前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)
- 踵腓靭帯(しょうひじんたい)
- 後距腓靭帯(こうきょひじんたい)
内反捻挫では、特に前距腓靭帯が最も損傷されやすいです。この靭帯は、足首の前外側にあり、内反や底屈(足を下に向ける動き)の動作で強い負荷がかかります。

症状と重症度の分類
内反捻挫には、損傷の程度によって以下の3段階の重症度分類があります。
Ⅰ度(軽度)
- 靭帯がわずかに伸びた程度
- 痛みは軽度
- 腫れや皮下出血はほとんどなし
- 歩行可能、スポーツ復帰も早期可能
Ⅱ度(中等度)
- 靭帯の部分断裂
- 明らかな腫れと痛み
- 圧痛や皮下出血もみられる
- 歩行に支障あり、復帰まで2〜4週間程度
Ⅲ度(重度)
- 靭帯の完全断裂
- 激しい痛みと腫れ
- 関節が不安定になり、歩行困難
- 長期間の固定や手術が必要なことも
診断と検査
問診と視診・触診
- いつ、どのような動きで痛めたか
- 足首のどの部分が腫れているか
- 体重をかけたときの痛みの有無
理学的検査
- 前方引き出しテスト(前距腓靭帯のゆるみを確認)
- 内反ストレステスト(関節の不安定性を評価)
画像検査
- X線:骨折との鑑別に必須
- MRI:靭帯の損傷程度を詳細に把握できる
- 超音波(エコー):靭帯や関節液の状態をその場で確認可能
治療方法
内反捻挫の治療は、「保存療法」が基本です。ただし、重度の場合や繰り返す場合は手術が検討されます。
急性期(受傷直後〜72時間)
RICE処置が基本!
- Rest(安静):無理に動かさない
- Ice(冷却):患部を氷で冷やし、腫れを抑える(20分×数回)
- Compression(圧迫):包帯やテーピングで腫れを抑える
- Elevation(挙上):心臓より高くして腫れを軽減
回復期(3日目以降〜2週間)
- 温熱療法(血流改善)
- 軽い関節可動域運動
- サポーター使用で日常生活復帰を支援
リハビリ期(2〜6週間)
- チューブやバランスボードでの筋力強化
- プロプリオセプション(感覚入力)トレーニング
- 競技復帰に向けた段階的な運動
手術療法
重度の靭帯断裂や再発を繰り返す場合は、「靭帯縫合術」「靭帯再建術」が行われることもあります。
再発予防のためのポイント
内反捻挫は、再発率が非常に高いケガです。予防のためには以下のポイントを意識しましょう。
足首の筋力強化
靭帯は一度緩くなったら、緩くなったままです。
腓骨筋群(ひこつきんぐん)を鍛えると緩くなった靭帯をカバーすることができます。

バランス感覚の向上
バランスボードや片足立ち訓練で、足首の安定性を高めます。
柔軟性の維持
アキレス腱や足底筋膜、ふくらはぎのストレッチを行い、関節の可動域を広げます。
サポーターやテーピング
スポーツ時には、足首を補強することでケガの予防が可能です。
内反捻挫のよくある誤解
「捻挫だから放っておいても治る」
→誤り! !
靭帯は伸びたら伸びっぱなしです。治ることはありません。
「腫れてないから大丈夫」
→軽度でも靭帯は損傷している可能性があります。腫れの有無に関係なく検査が重要です。
まとめ
内反捻挫は、軽視されがちですが、放置するとスポーツ復帰が遅れたり、再発によるパフォーマンス低下につながります。正しい知識を持って、早期に適切な処置を行うことが大切です。
ポイントをおさらいしましょう:
- 内反捻挫は足首が内側にひねられることで外側靭帯を痛めるケガ
- 前距腓靭帯が最も損傷されやすい
- RICE処置と段階的なリハビリが重要
- 再発を防ぐには筋力・柔軟性・バランスの強化が鍵
足首をひねったときは、軽く考えず、必ず整形外科やスポーツクリニックでの診察を受けるようにしましょう。スポーツを楽しみ続けるために、しっかりとした知識と対処法を身につけておくことが大切です。
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