「少し転んだだけなのに腰が激しく痛む…」
「いつのまにか背中が曲がってきた…」
そんな症状がある方は、腰椎圧迫骨折を起こしている可能性があります。

特に女性や高齢者に多く、骨粗しょう症と深く関係しているこの骨折。
しかし、多くの人が**「骨折していることに気づかない」**まま放置し、痛みが慢性化したり、背骨が曲がってしまったりしています。
今回は、腰椎圧迫骨折について
- どんな症状?
- なぜ起こるの?
- 治療法は?手術は必要?
- 自宅でできるリハビリは?
- 再発を防ぐには?
といった疑問に、医療視点から丁寧にお答えしていきます。腰痛に悩む方、介護に関わる方、ぜひ最後までお読みください!
腰椎圧迫骨折とは?
**腰椎(ようつい)**とは、背骨(脊椎)の下部にあたる5つの椎骨(L1〜L5)のことです。そのうち1つまたは複数が、潰れるように圧しつぶされる骨折を「腰椎圧迫骨折」と呼びます。
椎体(ついたい)と呼ばれるブロック状の骨の上部がつぶれる形が多く、横から見ると前方がくさび形に変形しているのが特徴です。
主な原因は「骨粗しょう症」
腰椎圧迫骨折は、ほとんどの場合骨粗しょう症が原因です。骨密度が低下して骨がもろくなっているため、以下のような軽い動作でも骨折が起きます。
- ベッドから立ち上がったとき
- くしゃみをしたとき
- 尻もちをついたとき
- 荷物を持ち上げたとき
これらは**「いつのまにか骨折」**とも呼ばれ、本人も骨折に気づかないことが多く、発見が遅れる原因となっています。
症状:こんな腰痛は要注意!
腰椎圧迫骨折では、以下のような症状が現れます。
初期症状
- 腰の一点に集中する鋭い痛み
- 寝返りや起き上がり動作で悪化
- 痛みで立ち上がれない・歩けない
数日〜数週間経過後
- 痛みが鈍くなり、慢性的な腰痛に
- 背中が丸くなる(円背)
- 身長が縮んだ感じがする
- 胃の圧迫感、呼吸が浅くなる
このような変化がある方は、早めに整形外科の受診をおすすめします。
診断方法
腰椎圧迫骨折の診断には以下のような検査が行われます。
・X線(レントゲン)検査
まず行われる基本的な検査で、骨の変形やつぶれ具合を確認します。複数の椎体に骨折が見つかることもあります。

・MRI検査
「いつ折れたのか分からない」というケースで有効。骨折の新しさ(新鮮性)を判定できます。
・骨密度検査(DEXA法など)
骨粗しょう症の程度を調べ、今後の治療方針を立てるために行います。
治療方法:基本は保存療法、まれに手術も
腰椎圧迫骨折の治療は、その多くが**保存療法(手術をしない治療)**です。ただし、症状の程度や骨折の状態によっては手術が選択されることもあります。
保存療法(非手術)
● 安静とコルセット
- 痛みの強い急性期は安静が基本。
- 特殊な硬性コルセット(胸腰椎装具)で固定し、患部に負担をかけないようにします。
● 徐々にリハビリ開始
- 数日〜1週間程度で痛みが軽減してきたら歩行練習などを開始。
- 約2〜3ヶ月で骨が癒合します。
手術療法(ごく一部のケース)
以下のような場合は手術が検討されます。
- 強い痛みが長期間続く
- 多椎体の骨折
- 脊髄や神経を圧迫している
- 明らかに脊椎の変形が強い
主な手術法
- Balloon Kyphoplasty(バルーン椎体形成術) → 潰れた骨を風船で広げてセメントを注入し、元の形に戻す。
- 椎体固定術 → 背骨に金属(スクリュー)を入れて安定させる。
リハビリ:動かないと逆に悪化する!
「骨折したなら安静第一でしょ?」と思いがちですが、長期間の安静は逆効果です。
なぜなら…
- 筋力低下によって寝たきりに近づく
- 骨の回復が遅れる
- 肺炎や血栓など合併症のリスクが上がる
リハビリの内容
時期 | 内容 |
---|---|
急性期(〜1週) | 寝たままの足の運動、深呼吸、体位変換 |
回復期(1〜4週) | 座位・立位練習、歩行訓練 |
慢性期(4週〜) | 背筋や腹筋を鍛える、バランス訓練 |
特に重要なのは、体幹の安定性を高めること。腹筋や背筋を鍛える「体幹トレーニング」は再発予防にもなります。このようなバランスボードの上に座るだけでも十分体幹を鍛えることが出来ます。
再発予防のポイント
腰椎圧迫骨折を一度起こすと、2回目・3回目の骨折リスクが急激に上がります。
そのため、「予防」が最重要です。
✅ 骨粗しょう症の治療
- ビスホスホネート系薬剤(骨の破壊を抑える)
- 活性型ビタミンD(カルシウム吸収を助ける)
- PTH製剤(副甲状腺ホルモン)(骨の再生を促進)
✅ 食事の改善
- **カルシウム:**牛乳、チーズ、小魚、大豆製品
- **ビタミンD:**きのこ類、鮭、日光浴
✅ 転倒予防
- 段差のない住環境を整える
- 滑りにくい床材や手すりの設置
- 室内スリッパの見直し
- 視力・聴力の定期チェック
✅ 筋力維持と運動習慣
- 片足立ち・スクワット・ウォーキングなど
- 医師・理学療法士と相談の上、安全に行う
介護や周囲のサポートの注意点
高齢者が腰椎圧迫骨折をすると、気力の低下・食欲不振・うつ状態になることも少なくありません。
周囲ができるサポート
- 痛みに共感し、無理に動かさない
- トイレ・入浴など生活動作を安全にサポート
- リハビリの継続を後押し
- 骨折予防の知識を共有する
介護が必要になった場合も、腰を丸めすぎず、安全な姿勢で移乗するように心がけましょう。
まとめ
腰椎圧迫骨折は、高齢者の生活の質を大きく左右する骨折です。
ただの「腰痛」だと思って放置すると、骨が変形し、背骨が曲がり、慢性的な痛みや寝たきりの原因になります。
✨この記事のまとめ✨
✅ 軽い転倒でも骨折する可能性がある
✅ 骨粗しょう症が根本原因
✅ 手術しないケースが多いが、リハビリが超重要
✅ 骨密度を高め、転倒を防ぐことが再発予防のカギ
「あの時、早めに受診していれば…」と後悔しないために。
ご自身やご家族の「いつもの腰痛」が、実は圧迫骨折かもしれません。気になる症状があれば、早めに整形外科を受診しましょう!
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